こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
人に何かを伝える場合には、
ストーリーを使うことが有効です。
とくにコピーライティングやプレゼンテーションでは
ストーリーが強力な武器になります。
新商品の開発秘話にせよ、新商品の紹介にせよ、
ストーリーにすると感情が動く上に
わかりやすくなるからです。
織田信長などの歴史上の偉人に人気があるのも
「鉄砲を使って長篠の戦い勝利した」
といったストーリーがあるからでしょう。
しかし、私からすると、
こうしたストーリーには落とし穴があります。
それは、ストーリーによって
本質が見えなくなるということです。
たとえば、例に挙げた
織田信長のストーリーについて考えてみましょう。
一般的には、織田信長が鉄砲を使い
武田勝頼が鉄砲を使わなかった、
というストーリーが広まっています。
つまり、先見性があって新しい武器を使った者が勝ち、
保守的で新しい武器を拒んだ側が
敗北したというストーリーです。
しかし、こうしたストーリーは
歴史学の専門家の間では否定されています。
なぜなら、織田信長と戦う前の第二次川中島合戦で、
武田勝頼も300挺の鉄砲を使っていたからです。
つまり、武田勝頼も保守的だったわけではなく、
鉄砲という新しい武器を準備していました。
では、何が勝敗をわけたのか?
その答えは難しく、情報弱者が喜ぶような
わかりやすいストーリーはありません(苦笑)。
たとえば、勝敗をわけた要因の1つは
物流の管理にあったという説があります。
というのも、強力な鉄砲を撃つためには、
火薬や弾丸といった材料が必要になりますよね?
ですが、火薬を作るための硝石や
弾丸の元となる鉛は簡単には入手できませんでした。
ただ、織田信長のほうは南蛮貿易によって
硝石や鉛の確保に成功していました。
一方、武田勝頼は思うように硝石や鉛は手に入らず、
材料不足に苦労していたようです。
鉄砲を使いたくても十分に材料を確保できない
状況にあったと言えます。
火薬や弾丸を作るため地元の神社から
材料をかき集めようとした記録もあるようです。
そして、こうした信長と勝頼のちがいを生んだのは、
地政学的なアドバンテージや
物流を掌握する政治的な根回しが関係しています。
その上、弾丸と火薬以外にも勝敗の要因はあるため、
実際はさらに複雑です。
さて、このように現実は、
わかりやすいストーリーにはなりません。
そのため、「鉄砲を使ったから勝利した」といった
わかりやすいストーリーを聞いた場合、
私は眉に唾をつけて聞きます。
たいていはエンターテインメントのための
脚色と演出が入っているからです。
もちろん、世の中の人はストーリーが好きですし、
未来永劫その傾向は変わらないでしょう。
そのため、あなたがコピーライティングや
プレゼンテーションをする立場なら、
ストーリーを使うのがおすすめです。
一方で、あなたが聞き手になる場合は、
ストーリー鵜呑みにしすぎないように注意してみてください。
ストーリーはわかりやすくて面白いのですが、
本質を覆い隠す邪魔者でもあるからです。
相馬一進