こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
私が商品開発に携わるときに、
繰り返し考える問いがあります。
それは、「お客さんの“あきらめ”は何だろう?」
ということです。
なぜなら、お客さんの“あきらめ”が見つかると、
自分の会社だからこそ提供できる価値を見つけて
ヒット商品を生み出せるからです。
これは、ネスレ日本の元社長兼CEOである
高岡浩三さんが商品開発をした事例からもわかります。
高岡浩三さんいわく、2000年代に入って
インスタントコーヒーの市場は低迷したそうです。
その原因の一端は、一人暮らしや核家族の人が増えて
自宅でコーヒーを淹れにくくなったことでした。
というのも、従来のケトルやヤカンを使うと
コーヒー5杯分くらいのお湯がまとめて沸いてしまいます。
あるいは、ドリップ式でコーヒーを淹れる場合も、
5杯分以上はできるでしょう。
三世代が同居していた昔ながらの家族形態であれば、
この大量のコーヒーが飲めました。
ですが、1人や2人で暮らすライフスタイルになると、
5杯以上も飲みきれません。
結果、自宅でコーヒーを飲む人が減っていたのです。
「今の生活では手軽に淹れにくいから、
家でコーヒーを飲むのをあきらめよう」
こうしたお客さんの“あきらめ”があったのです。
このあきらめを見つけてネスレ日本が発明したのが
「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」
というコーヒーマシンでした。
このマシンの一番の特徴は、
1杯分だけのコーヒーを美味しく淹れられることです。
そのため、1人や2人で暮らす人でも
手軽にコーヒーが淹れられます。
お客さんがあきらめていた願望に
まさにフィットする商品だったのです。
また、これは他の家電メーカーには
作れない商品でもありました。
なぜなら、マシンは開発や流通にコストがかかるため、
単品での販売では赤字になってしまうからです。
ネスレはコーヒーの販売をしているからこそ、
マシンの赤字をコーヒーの利益で取り戻せたのです。
このようにお客さんの“あきらめ”がわかると、
他社の丸パクリでは作れない価値が見つかり
ヒット商品が生み出せます。
言い換えると、お客さんの“あきらめ”がわからないと、
他社のモノマネ商品を作るだけになりがちです。
ただ、モノマネ商品は賞味期限が短い上に、
誇大広告をしないとあまり売れません。
しかも同業者と似た商品なので価格競争になりやすく
薄利多売にもなってしまう。
そういったモノマネ商品の失敗をしないためにも、
お客さんの“あきらめ”を探し出して
新しい価値を作り出してみてください。
もっとも、お客さんの“あきらめ”を見つけて
ヒット商品を作るのは
商品開発の中でも難易度の高い方法です。
そのため、商品開発が苦手な場合は
無理に自分でおこなわずに、
専門家に手伝ってもらったほうがいいでしょう。