こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
先日、ある起業家と話していて私は無力感を覚えました。
なぜなら、その相手が万能感を持っていたからです。
具体的に言えば、ビジネスや投資で小さな成功をして、
「自分はなんでもできる!」「私は無敵だ!」
といった錯覚をしているようでした。
こうした万能感というのは、
心理学の視点でいうと精神的に幼稚な証拠です。
子供が「僕はヒーローだ!」などと
はしゃぐことがありますよね?
あれと同じです。
子供なら微笑ましいものですが、
大人になっても万能感を持ち続けていると
調子に乗って判断を誤り後悔するハメになります。
しかし……。
そういった万能感のある方に
「そのままではマズイですよ」と私が指摘しても
ほとんどの場合は聞き入れてはもらえません。
冗談めかして助言を聞き流すか、
反発して怒ってしまうだけで
万能感を捨てようとはしないのです。
では、どうしたら人は万能感から卒業できるのか?
それは、手痛い挫折の経験です。
たとえば、投資で大損するとか、
パートーナーに別れを切り出されるなどすると、
「自分が間違っていた」と気付いて大人しくなるでしょう。
精神分析家はこれを「心理的な去勢」と呼びます。
知ってのとおり、去勢とは性器を取り除くことです。
ペットや家畜を去勢をすると、
性衝動がなくなっておとなしくなります。
それと同じように、万能感が切り落とされることを
精神分析の分野では去勢と呼ぶのです。
(とくに性別には関係なく去勢という言葉を使います。)
そして、心理的な去勢が起きるためには
実際に挫折を“経験”する必要があります。
言い換えると、口先だけで注意をしても去勢には至らない。
そのため、万能感が強くなっているその起業家に
私は何も助言しませんでした。
「ああ、この人は万能感があるけど
挫折して去勢されるまで気付かないんだろうな」
と、見守るだけにしたのです。
どうでもいい輩なら何も気にしないのですが、
それなりに好感が持てる方だったので
何もできない自分に少し無力感を覚えました。
ただ、それこそ「自分は万能な存在ではない」と
私は認識しています。
だからこそ、自分の手に負えない問題は
手放すことにしたのです。