こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
経営者にとって重要な能力の1つは、
「トレンドを見極めること」です。
つまり、ある商品やサービスが売れているときに
「このトレンドがどれくらいの期間、続くだろう?」と
判断するスキルが必要になります。
そして、トレンドの予測は冷徹に判断する必要があり、
感情論で考えてはいけません。
なぜなら、目先の感情に振り回されると、
お金、時間、信頼などを失ってしまうからです。
たとえば、2019年末から
新型コロナウイルスが流行した際に
判断を誤った経営者は多くいたものです。
当時、感染症の影響でマスクがバカ売れし、
買えない人もいたほど品薄になっていました。
そういった品薄を解消しようと、
「マスクを開発してほしい」と国内の製造業者に
日本政府は呼びかけていたそうです。
場合によっては、マスクを作っていないメーカーにも
日本政府が新規開発を依頼したという報道がありました。
さて、ここで考えてみてほしいのですが、
もしあなたが製造業の経営者なら、
マスクの開発をしたでしょうか?
「政府の呼びかけなら社会に貢献したい」とか
「みんなのためにマスクを作ってあげたい」と、
使命感で行動したい気持ちになるかもしれません。
ですが、そういった使命感には注意してください。
なぜなら、トレンドを見極められずに
感情的な判断をしてしまっているからです。
もし私が経営者であれば、政府の呼びかけがあっても
マスクの開発はしなかったと思います。
もちろん、すでにマスクを生産しているなら、
増産くらいはするかもしれません。
ですが、ある程度の数までに抑えますし、
新規開発なんてもってのほかです。
なぜなら、マスクの品薄という一種のトレンドが
さほど長く続かないことは明らかだからです。
というのも、感染症の流行は
ワクチンなどが広まったり免疫がついたりすれば
ある程度は収まっていきます。
そのため、10年単位で続くことはありえません。
くわえて、マスクという製品は構造が簡単で、
高度な技術がなくても短時間で生産できます。
しかも海外でも生産できるため、
物価が安い国からの輸入品も出回るでしょう。
すると、数か月で市場にはマスクがあふれて、
すぐに品薄は終わると考えられます。
感染症で世界が混乱していたとはいえ、
このくらいのトレンドの予測は難しくありません。
にもかかわらず、感情的に経営判断をしてしまうと、
マスクのために無駄な設備投資をしてしまい、
在庫も抱えて大赤字になってしまう。
事実、テレ東BIZの『ワールドビジネスサテライト』では
感染症の時期にマスクを開発して
8,000万円の赤字になった会社の報道がありました。
社会のために行動した会社が報われないのは、
経営者としては残念な気持ちになるでしょう。
その気持ちはわかりますが、経営者はあくまで冷徹に
トレンドを見極める必要があります。
これは、マスクの例に限りません。
自分の感情を入れずにトレンドを見極めないと、
手痛い失敗をするハメになるのです。
相馬一進