こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
「ポイント・オブ・ノー・リターン」という航空用語があります。
これは、直訳すると回避不能点という意味で、
「飛行機が出発点に戻れないほど
燃料がなくなってしまう段階」を指します。
要するに、「後戻りできない段階」です。
そして、ポイント・オブ・ノー・リターンという表現は
航空用語以外でもよく使われます。
たとえば、2020年の五輪開催国を選ぶプロセスに
不正があったことをあなたは覚えていますか?
IOCが「2020年の五輪開催国」を選ぶ際に、
電通が「IOCにワイロを送る不正」をしていたことが
2016年に明るみになりましたよね。
では、2016年に不正が見つかった段階で、
IOCは「2020年の五輪開催国」を白紙に戻して
またゼロから開催国を選び直すべきだったでしょうか?
いいえ、そうは思えません。
なぜなら、普通に考えて、2016年というのは
ポイント・オブ・ノー・リターンだったからです。
オリンピックは、開催国を決定してから
10年弱の時間をかけて準備をする必要があります。
開催の4年前に、選考時の不正が見つかったとしても、
そこから開催国を選び直していたら間に合いません。
選考時の不正は強く糾弾しつつも、
東京五輪を開催するしか道がなかったわけです。
さて、私が思うにポイント・オブ・ノー・リターンは、
人間関係にも存在します。
たとえば、ある取引先の相手とあなたの考えが合わず、
口論になってしまったとします。
にもかかわらず、お互いに謝罪や弁明ができずにいると
さらに険悪なムードになっていきますよね。
その後、話し合っても全く理解し合えずに
対立が深まったらどうなると思いますか?
おそらく、もはや相手は怒る気もなくなり、
あなたとの関係を終わらせたいと考えるはずです。
(たいていの場合は、
あなたも同じように感じるでしょう。)
まるで離婚間際の夫婦のように、
仲直りする気すらないほど冷え切ってしまうわけです。
このような段階は、私に言わせれば
「ポイント・オブ・ノー・リターン」です。
つまり、仮にどちらかが頭を下げても
菓子折りを渡しても関係修復はできません。
だからこそ、重要なのは
ポイント・オブ・ノー・リターンになってしまったら、
スパッとあきらめて損切りすることです。
世の中には、人間関係の
ポイント・オブ・ノー・リターンに達しているのに
必死に改善をしようとする人がたまにいます。
心理学のテクニックなどを使って、
なんとか元に戻ろうとするのです。
ですが、ポイント・オブ・ノー・リターンに達した場合は、
燃料切れの飛行機と同じように後戻りできません。
どんなにもがいても悪化するだけなのです。
ですから、ポイント・オブ・ノー・リターンになったら
「もうしょうがない」と割り切ってください。
そして、今後の人生で同じことを繰り返さないように
再発防止を考えましょう。
相馬一進