こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
映画、ドラマ、アニメなどを見ていると
次のようなシーンがときどきあります。
「若造、いい目をしているな」
などと何かの分野のベテランが言って、
目つきだけで若者の才能を見抜く場面です。
子供向けのアニメはもちろん、
大人向けのリアルな設定の映画でも
こうしたシーンがあるでしょう。
しかし、こうしたやり取りは私から見ると
完全なファンタジーであり現実にはありえません。
なぜなら、目つきなどの表情だけでは
相手のことがほとんど読み取れないという事実が、
多くの心理学の研究でわかっているからです。
たとえば、心理学者のフランク・シュミットは、
過去100年の人事採用のデータを研究し
どういった手法に正確性があったかを発表しています。
結果、人間の才能を見抜くには、
実際に何かの作業をしてもらったり、
知能テストをしたりする必要があるとわかりました。
また、才能とは少し別の話ですが、
2019年のノースイースタン大学の研究でも
表情から思考や感情を見抜くのは困難だと結論づけています。
ようするに、目つきでは何もわかりません。
「いや、私は成功する若者がわかる!」
と言い張る人もたまにいますが、
たいていは「後知恵バイアス」です。
後知恵バイアスというのは、
「何かが起きた後に、それが予測できていた」
と後から感じる認知のゆがみを指します。
つまり、ある若者が結果を出してから、
「そう言えば初めて見たときから、
あの子の目つきがいいと私は思ってたんだよ」
と後出しジャンケンをしているに過ぎません(苦笑)。
私自身、のべ数千人以上の方に
ビジネスやメンタルの指導をしてきました。
しかし、目つきだけでは何もわかりません。
強いて言えば、
1年くらいその人の行動を見続けていれば、
その後に結果が出そうかはわかります。
これは直感でもなんでもなく、
学び方や努力の仕方が見えてくるので、
未来が予測しやすくなるというだけです。
そのため、冒頭のフィクションによくあるセリフを
現実的に書き換えるなら
「若造、いい行動をしているな」となりますね。
これが本当に指導力のある人の視点のはずです。
ですから、あなたが何かを学ぶときは
「いい目をしていますね」となどと言う講師からは
離れることをおすすめします。
なぜなら、後知恵バイアスにまみれている上に、
「自分は他人の才能を見抜ける」
と、思い上がっている可能性が高いからです。