こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
フィクションの世界にあって、
現実にはあまりない現象があります。
それは、「ある分野で学んだスキルが
別の分野でも役に立って大活躍する」ということです。
たとえば、映画や漫画の中で
チェスの得意なキャラクターが登場するとします。
すると、チェスで学んだ論理思考を使って、
ビジネスやスポーツでも活躍することが多いでしょう。
魔法学校の世界を描いた人気作品
『ハリー・ポッター』でも、
主人公たちの試練の1つとしてチェスが登場していました。
世の中(とくに欧米圏)ではチェスのスキルを高めると
論理思考のスキルも高まると
信じられているのかもしれません。
ですが、現実においてはチェスを学んでも
必ずしも論理思考は鍛えられないことがわかっています。
というのも、心理学では
ある学習が別の場面においても影響することを
「学習の転移」と呼びます。
「野球を練習したら、ソフトボールも上手くなった」
といった現象が、学習の転移の一例です。
ただ、この「学習の転移」は、
かなり似た分野でしか起きないとわかってきています。
たとえば、「チェスを学んだら将棋も得意になった」
といった程度ならあり得ます。
しかし、
「チェスを学んだら論理思考全般が得意になった」
という現象は確認できていません。
ましてや「チェスを学んだらビジネスでも成功した」
などというのは夢物語です(苦笑)。
これは、2017年にリバプール大学の
ジョバンニ・ サラらがおこなった研究でも示唆されています。
チェスに限らず、音楽やスポーツの能力も、
あくまで似た分野でしか
「学習の転移」が確認されなかったのです。
つまり、チェスで論理的思考力が高まったり
音楽で知性が高まったりする現象はありませんでした。
ここからわかるのは、あるスキルを身に着けても
調子に乗ってはいけないということでしょう。
チェスが強くなったとしても、
マーケティングのスキルにはなりません。
あるいは、コーチングの練習をしても、
セールスのスキルにはなりません。
それらは別途学ばないと、結果を出せないのです。
相馬一進