こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
最近、テレビやインターネットなどで
多くの人の意見を読んでいて感じることがあります。
それは「二極化」という言葉を
安易に使い過ぎだということです。
「富裕層と貧乏人に二極化する」とか、
「モテる人とモテない人に二極化する」
といった表現が飛び交っています。
ですが、これは表現の誤りか、
あるいは事実の誤認だというのが私の考えです。
というのも、そもそも二極化とは、
言葉のとおり2つの「極」ができる状態です。
たとえば、ある職業に就く人たちの年収を
調査したデータがあったと思い浮かべてみてください。
その場合に、年収1,000万円以上が4割、
年収200万円以下が4割、
両者の中間が2割だったとします。
このデータをグラフにした場合は、
年収1,000万円と年収200万円の
2つの箇所が大きくコブのように膨らむでしょう。
そして、その中間付近の年収の部分が
大きく凹んだグラフになります。
まるでフタコブラクダの身体を
横から眺めたような形に見えるはずです。
こうした状態がまさに二極化だと言えます。
文字通り2つの「極」ができているからです。
言い換えると、2つの「極」ができていない場合には
二極化とは言いません。
二極化という主張の中には、こうした意味を考えずに
明らかに誤用している人がいます。
あるいは、この言葉の意味を知っていながら、
事実誤認している人もいるかもしれません。
たとえば、「富裕層と貧乏人に二極化している」
と話している人がときどきいます。
この言説は本当でしょうか?
令和元年に厚生労働省が発表した
「賃金構造基本統計調査の概況」のデータによると、
とくに二極化はしているようには見えません。
年齢や性別によって年収の分布はちがいますが、
いずれにしても中間層が多くなっています。
つまり、フタコブラクダ(二極化)ではなく、
ヒトコブラクダ(一極化)です。
具体例をあげると30代前半であれば、
男性は384~479万円、女性は288~383万円の割合が
最も高くなっています。
これは、極端な高所得者でも低所得者でもありませんよね?
そして今後、高所得者と低所得者に分かれる
という予測もないのです。
もちろん、日本経済が伸び悩んでいるというのは事実です。
また、グラフで言うと中央の山の厚みが変わって、
昔に比べると年齢別の収入が多様化しています。
年功序列の廃止が増えて、
誰でも同じくらいのペースで年収が上がる時代では
なくなったということです。
とはいえ、それを「二極化」と呼ぶのはおかしい。
「二極化」と言っている人は、
ワイドショーなどのセンセーショナルの報道ばかり見て
実際のデータを見ていないのでしょう。
「二極化している!」という言説は鵜呑みにせずに、
まずはデータを見るのがおすすめです。
極端な主張を信じてしまうと、
ビジネスや人生に関わる意思決定も
判断を間違ってしまいかねません。
相馬一進