こんにちは。
相馬一進（そうまかずゆき）です。
ビジネスをしていると、
「平均的なニーズに合わせようか、
一部のニーズに特化しようか」と悩む場面があります。
とくに商品開発のときなどは、
大きく方針が変わるポイントであるため、判断が難しいでしょう。
ただ、1つ言えるのは、
「平均的なニーズを狙うと熱狂は生まれない」
ということです。
なぜなら、あるブランドを強く支持するファンは、
「平均からの乖離」に惚れて熱狂するからです。
たとえば、あなたがカレー屋を出店するとします。
そのときに「万人に受けるカレーを作ろう」と思って
味を調節していくと、どうなると思いますか？
塩味、甘味、旨味、油脂のバランスを整えて
誰もが「普通に美味しい」と感じる味を目指すと、
おそらくバーモントカレーのような味になるでしょう。
バーモントカレーはメーカーのハウスが長年かけて
万人受けするように改良を重ねており、
まさに平均的なニーズに合わせているからです。
しかしその半面、バーモントカレーに熱狂する、
信者のようなファンはほぼいません。
バーモントカレーのファンクラブなどはありませんし、
限定ブランド品を作ってもあまり売れないでしょう。
こうなるのは当然で、平均的なニーズを満たすと、
誰にとっても「普通の味」になるからです。
言い換えると、「特別な味」にはなりません。
一方、「一部の人が熱狂するようなカレー屋」を
あなたが出店するとしたら、どうしますか？
方法はいろいろあると思いますが、
スパイスの風味を強くしたり、極端に辛くしたり
珍しい具が入れたりするはずです。
実際、メディアに取り上げられる有名店のカレーは、
こういった調理法で「特別な味」になっていますよね。
そして、そういった有名店のカレーは、
食べてみるとあまり美味しくない場合も多いでしょう。
ハッキリ言ってしまえば、大抵の人にとっては
有名店よりバーモントカレーのほうが美味しい（笑）。
ですが、それでいいのです。
いや、それがいいのです。
なぜなら、そんな平均的ではない味だからこそ、
「特別な味」となり、お客さんの熱狂を生むからです。
そもそも「特別」とは、「平均からの乖離」を指します。
そのため、平均的なニーズを満たすことと、
特別な商品を作ることは、絶対に両立できません。
そのため、お客さんの熱狂を狙う場合は、
平均的な人の好みからズレてしまって当然だと言えます。
そして、そんなふうに平均から乖離していることを
独自のこだわりとしてお店側は伝えていくのです。
私が店長であれば「この味がわからない奴はバカだ」
と感じるくらいに、広告、ブログ、SNS、店内など、
いたるところで「特別な味」をアピールします。
その特別さに感銘を受けた人が、
さらに激しく熱狂していくのです。
極端な言い方をすると、
平均的な感覚で言えばあまり美味しくないカレーを
「これは美味しいカレーなんだ」と感じるように
お客さんを洗脳していくわけですね。
さて、こうした構造があるため、熱狂を作ろうとするほど、
万人ウケからは遠ざかりますし、その逆も然りです。
たまに駆け出しの起業家などが
「多くの人のニーズを満たしつつ、
お客さんが熱狂するようなブランドを作りたい」と
妄言を語っていることがありますが、
それは原理的に不可能なのです。
相馬一進
