
こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
前回から、「移動で人生変わる人、変わらない人」
をテーマに、全3回のシリーズ形式の記事を
書いています。
第1回目では、
移動が人生を好転させる理由を3つお伝えしました。
環境の引力が想像以上に強いこと、
思いがけない幸運と接触しやすくなること、
体を動かせば脳の働きも高まること。
この3つでしたね。
まだ読んでいない場合は、
ぜひ前回の記事も読んでみてください。
ただし、実は移動には意外な落とし穴があります。
場所を変えただけでは、
何も変わらないことがあるのです。
それどころか、移動によって、
今まで持っていた大切なものを失う場合さえあります。
なぜ移動しても、人生が変わらないのでしょうか?
そして、どんな人は、
むしろ移動しないほうがよいのでしょうか?
第2回目は、その答えを、
アメリカ政府とスウェーデンの
大規模な研究をもとに具体的に解説します。
この内容を知れば、引っ越しや転職で
後悔するリスクを減らし、
移動を人生の追い風に変えられるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
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『移動で人生変わる人、変わらない人(第2回目)』
144万人の調査が示す移動の罠
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では早速、移動の落とし穴について
解説していきます。
ここであなたにクイズです。
貧しい街から、安全で豊かな街へ
無料で引っ越せるとしたら、どうなると思いますか?
「年収が上がりそう」とか
「人生が変わりそう」と思いませんか?
実際にアメリカ政府は
その実験をやったんです。
しかも規模がすごいんです。
対象は、なんと4,600世帯!
そして、この実験から、
衝撃的な結果が出たんです。
まず、低所得世帯、約4,600世帯を集めて、
その中からクジ引きで家族を選びました。
そして政府はこう言ったんです。
「今、君たちは、貧しい街に住んでいるよね。
だから、もっと豊かで安全な、
良い街に引っ越させてあげるよ。
しかも、引っ越し代も政府持ちだ。
引っ越すかい?」と。
当選した家族の多くは、もちろん、
安全でいい街に引っ越しました。
さて、引っ越した家族の収入は
どうなったと思いますか?
ほとんど、変わりませんでした。
ご参考:
Moving to Opportunity for Fair Housing Demonstration Program – Final Impacts Evaluation
https://www.huduser.gov/publications/pdf/mtofhd_fullreport_v2.pdf
雇用も、生活保護からの脱却も、ほぼ変化なし。
統計的に有意な改善は
確認されなかったんです。
「えっ、そんなことある?」と思いますよね。
普通は、良い街に引っ越せば、良い仕事が見つかって、
人生も良くなりそうな気がします。
でも、ガチで収入は上がらなかったんです。
しかも、これ、
10年以上追跡した調査です。
なぜか、わかりますか?
答えはシンプルです。
良い街には引っ越せても、
「良い仕事をする能力」は上がらなかったからです。
たとえば、英語が話せない人が、
外資系企業の多い街に引っ越しても、
英語が話せるようにはなりません。
プログラミングができない人が、
IT企業の多い街に引っ越しても、
プログラマーになれるわけではありません。
街は変わっても、
自分自身の知識や経験は変わらない。
だから、収入も変わらなかったんです。
これがこの実験から見えてきたことです。
厳しい言い方をすると、住所が変わっただけでは、
人生はなかなか変わりません。
変わるのは、郵便物の送り先くらいです(笑)
ところが、
この話には続きがあるんです。
13歳未満の子どもだけは、違いました。
良い地域に移った子どもたちは、
大学進学率が高くなり、
将来の収入も高くなっていたんです。
推定では、引っ越さなかった子どもよりも
約31%も収入が上がりました。
ご参考:
The Effects of Exposure to Better Neighborhoods on Children: New Evidence from the Moving to Opportunity Experiment
https://opportunityinsights.org/wp-content/uploads/2018/03/mto_paper.pdf
つまり、移動の効果は、
年齢によって大きく違ったんです。
大人には大きな変化が見られなかった。
一方で、子どもには、
長期的な変化が見られた。
なぜだか、わかりますか?
この答えはシンプルです。
子どもは、新しい環境の影響をより強く受けて、
内面も変化しやすいからです。
新しい友達、新しい学校、新しい価値観。
その影響で本人の能力が伸びていきます。
大人は、すでに知識や経験が積み上がっているため
街を変えるだけでは変わりづらい。
一方で、子どもはまだ成長の途中です。
だからこそ、街が変われば、
その後の人生も変わりやすい。
それだけの話です。
「引っ越せば年収が上がる」は、
約4,600世帯の実験で、はっきり否定されました。
ただし、13歳未満の子どもには効果がありました。
移動は、誰にでも同じように効く魔法ではないんです。
「いや、それはアメリカの話でしょ?
他の国でも同じことが言えるんですか?」
と思いますよね?
実は、インドでも似たような研究があります。
スラム街に住んでいる家族を対象にした実験です。
研究者たちは、クジ引きで選ばれた家族に、
郊外の新築の良い住宅に引っ越す権利を提供しました。
要するに、貧しい家から、より良い家へ
タダで引っ越せるというラッキーな話です。
ご参考:
Moving to Opportunity or Isolation? Network Effects of a Randomized Housing Lottery in Urban India
https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/app.20150397
当選した家族の多くは、
もちろん引っ越しました。
では14年後、どうなっていたと思いますか?
確かに、住宅環境は良くなっていました。
そりゃ、そうです。
でも、所得や教育水準には
大きな改善が見られませんでした。
それどころか、もっと深刻な問題が起きていたんです。
親戚や友人などのコミュニティから、
孤立してしまったんです。
スラム街にいたときは、
お金がなくても、近所で助け合っていた。
困ったときに頼れる人が、すぐそばにいたんです。
それが、引っ越したことで、
その助け合いのネットワークの多くを失ったんです。
なぜか、わかりますか?
人間関係は、物理的な距離の影響を
強く受けるからです。
「ネットで連絡すればいいじゃん」と
思うかもしれません。
でも、毎日顔を合わせる関係と、
ネット越しの関係では、信頼の深さが違うんです。
このように、引っ越したら
人生の質が下がる場合があります。
さらに、移動し続けた人ほど
メンタルがやられているという
衝撃的な結果もあります。
スウェーデンで、約144万人を対象にした、
超大規模な追跡研究があります。
144万人ですよ!?
日本で言ったら、神戸市の人口くらいです。
ご参考:
Association of Residential Mobility Over the Life Course With Nonaffective Psychosis in 1.4 Million Young People in Sweden
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2696965
この研究でわかったのは、幼少期から青年期にかけて
頻繁に引っ越しを経験した人ほど、
その後の精神疾患リスクが
高い傾向があったということです。
特に16歳から19歳の時期に
毎年のように引っ越した人は、
一度も引っ越さなかった人と比べて、
メンタルを病むリスクが約2倍という結果でした。
「統合失調症や妄想性障害のような
精神病との関連が強かった」と書かれています。
誤解を恐れずに言えば、転勤族の子どもは
メンタルを病みやすいと考えられます。
なぜなのでしょうか。
もちろん、はっきりしたことはわかりません。
ただ、人間関係が途切れやすくなることも
関係しているかもしれません。
毎年のように引っ越していると、
せっかく築いた友人関係を
何度も手放すことになります。
そうした経験が積み重なることで、
孤独感やストレスにつながる可能性があります。
もちろん、これは観察研究です。
「引っ越しそのものが精神病を引き起こした」と
完全に証明されたわけではありません。
それでも、
「頻繁な移動がメンタルを消耗させる可能性」は、
強く示唆されています。
ここまでを少しまとめると、ポイントは3つあります。
・引っ越しをしても大人は年収が上がらない
・ただし、13歳未満の子どもは年収が上がりやすい
・引っ越しをすると、人間関係が切れてしまいやすい
このように、移動というのは
メリットだけではないんです。
さらに「移動しない方がいい人」は、
実はあなたが思っているよりも多いんです。
・育児中で、子どもの環境を安定させたい人
・親の介護で、地元を離れられない人
・地域密着型のビジネスをしている人
・職人や研究者のように、長い時間をかけて
成果を積み上げる人
・内向的で、人間関係の入れ替えに
大きなストレスを感じる人
こういう人たちにとっては、
移動しないことの方が良い選択なんです。
「移動しない自分はダメだ」と思う必要は、
まったくありません。
そして、ここまで読んでこう思いませんか?
「結局、移動した方が良いの?
移動しない方が良いの? どっちなの?」と。
これは、すごく視点が高い疑問ですね。
というのも、ネット上には
「とにかく、どんなときでも移動した方が良い」
という情報が多いからです。
こういうクソ情報に
からめとられないでくださいね。
「人生の質は移動距離で決まる」とか、
トンデモな情報ですから。
冷静に考えれば、
「いや、そんなわけないでしょ?」と思うはずです。
では、どういう移動なら人生が良くなりやすいのか。
逆に、どんな移動ならしない方が良いのか。
次回は、その境界線と、
移動する前に必ずやってほしい3つのステップを
科学的に説明します。
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以上、「移動で人生変わる人、変わらない人」の
第2回目でした。
次回は、このシリーズの最終回です。
人生を変える「良い移動」と、
むしろ人生を悪くする「悪い移動」の違いを知って、
ぜひあなたの人生に役立ててください。




















