
こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
前回から、
「ペルソナって意味ないの? まさかの検証結果」
というシリーズ形式の記事を書いています。
第1回目は、
カルビーのスナック菓子「じゃがビー」を例に、
ペルソナの使い方を解説しました。
もしまだ読んでいない場合は、
ぜひ前回の記事を読んでみてください。
しかし、果たしてこのペルソナが
本当に集客につながったのかどうかの検証は
ほとんどおこなわれていません。
そこで、今回は、ペルソナの集客効果を
エビデンスに基づいて検証していきます。
マーケティングの真実を知って、
あなたのビジネスを成長させるためにも
ぜひ最後まで読んでください。
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『 ペルソナって意味ないの? まさかの検証結果
(第2回目)』
エビデンスで暴くペルソナの嘘
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それでは、早速、
じゃがビーの検証結果からお伝えしていきましょう。
まず、「ある商品が、どの年代の、
どの性別の人に売れているのか」というデータは、
企業にとっては機密情報です。
当然ですよね?
だから、
公開してくれることは少ないです。
これはカルビーでも同じです。
でも、メディアからのインタビューに対して、
カルビーはデータを公開してくれているんです。
親切ですよね。
興味があれば読んでみてください。
自己流「ペルソナ」で大ヒット商品生み出す
(日経クロステック)
https://xtech.nikkei.com/it/article/JIREI/20070914/282071/
「ペルソナ巧者」がはまった落とし穴
Jagabee原点回帰でV字回復(日経クロストレンド)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00834/00011/
まず年代についてです。
カルビーの発表によれば、
じゃがビーは20代〜30代の女性どころか、
女性のほぼすべての世代に購入されているようです。
あれ? おかしくないですか?
だって、じゃがビーの食感も味もパッケージも
テレビCMも全て、20代〜30代の女性に
特化していたはずですよね?
それにもかかわらず、
なぜ女性のほぼすべての世代に
購入されているんでしょうか?
これって、「売上を上げる」という
ビジネスの点では成功です。
でも、「ペルソナに買ってもらう」という点では
失敗ですよね。
たとえば、結婚相談所で
「27歳の独身女性希望」と言ったのに、
「70歳のおばあちゃん」がマッチングされるようなものです。
ありえないでしょ?
次に性別についてです。
これもカルビーのマーケティングチームが
発表しています。
なんと、「購入者の半数」は女性だったそうです。
ということは、裏を返すと
「購入者の約半数は男性」ということになりますよね?
え、マジで!?
またペルソナ以外も
買ってるじゃないですか!
これもありえないでしょ?
だって、性別も年代と同じことが
起きているからです。
ちなみに、東京都文京区の人や、
ヨガと水泳にこっている人に
売れているかどうかについては、
調べてもわかりませんでした。
まあ、カルビーもそこまでは
検証していないのでしょう。
でも、たぶん、この調子だと
ペルソナ以外の人も買っていそうですね。
それにしても、不思議じゃないですか?
なんで、ペルソナだけに向けて商品を作って、
絞り込んで集客したのに、
ペルソナ以外の人も買ってしまったのでしょうか?
これはじゃがビーだけに限った
珍しい出来事なのでしょうか?
それとも他の商品でも、
同じことが起きていると思いますか?
そこで、ペルソナについて科学的に検証をしている、
南オーストラリアの大学の論文から
事例をご紹介しましょう。
https://marketingscience.info/wp-content/uploads/staff/2015/08/7229.pdf
キットカットなどで有名な
ネスレという食品メーカーはあなたも知っていますよね?
ネスレは以前、海外で「ヨーキー」という
チョコレートバーを売っていました。
そのヨーキーは、CMでも、商品の包装でも
「これは女の子向けではありません」と
伝えていたのです。
さらには、女性のマークに
禁止マークもつけていたんです。
https://www.reddit.com/r/candy/comments/1el5kxx/why_is_this_candy_bar_not_for_girls_available_in/?tl=ja
これは10年以上前の包装ですが、
今の時代だったら、フェミニストがブチギレて
絶対にネットで炎上しますよね?
時代背景もありますが、
これにはさすがに私も驚きました。
では、ここからが重要です。
果たして、この包装で、
本当に女性はヨーキーを買わなかったのでしょうか?
普通、女性は買わないって思いますよね?
しかし、なんとお客さんのうち、
47%は女性だったのです!
つまり、男女比はほぼ半々です。
ペルソナを設定して、絞り込んで集客しても、
結局ペルソナじゃない人が買うんです。
信じられない結果ですよね?
莫大なお金をかけて、「女の子向けじゃない」と
テレビCMもたくさん打ったんですよ。
なのに、フタを開けたら、
まさかのジェンダー平等!
ある意味、時代の先を行ってましたね。
あとは、子供を持つ母親、
つまりママ層向けのクレジットカードの事例も、
同じ論文の中からご紹介しましょう。
あるクレジットカード会社はママ層に、
クレジットカードを新しく作ってもらおうと思いました。
では、どうやってママ層を
集客したと思いますか?
産科の病院(出産の病院)と提携をしたんですね。
この集客の方法って、頭よくないですか?
産科の病院には、
ママ層がいっぱいいるからです。
では、産科の病院で集客することによって、
ママ層はクレジットカードを
新しく作ってくれたのでしょうか?
この状況なら当然、ママ層ばかりが
クレジットカードを作ってくれると思いますよね?
答えは産科で集客したときと、
産科以外で集客したときで客層に違いが出なかったのです。
不思議じゃないですか?
産科の病院という絞り込んだ場所で集客をしたのに、
ママ層をたくさん集客することができなかったんです!
ということは、クレジットカードの客層だけでみたら、
産科も、肛門科も、泌尿器科も、性病科も、
全部同じってことになりますよね。
産科のお医者さんは、
「一緒にしないでくれ」と思っていそうですが(笑)。
ここで、あなたはこう思うかもしれません。
「ペルソナを設定してターゲットを
絞り込んでいるのに、なぜそのターゲットを
集客できないの?」と。
それを解説しているのが、
オハイオ州立大学の論文です。
https://www.researchgate.net/publication/225825507_The_Effectiveness_of_Demographic_and_Psychographic_Variables_for_Explaining_Brand_and_Product_Category_Use
この論文では、
古いマーケティングの世界で言われている
2つのペルソナ設定について検証しました。
この2つのペルソナ設定って、ご存知ですか?
1つはデモグラフィックと呼ばれる
「基本情報」でのペルソナ設定です。
具体的には、住所、年代、性別、職業、家族構成などです。
じゃがビーのペルソナである
「27歳の独身女性」とか、「東京都文京区在住」
みたいな設定です。
また、ヨーキーの「女の子向けではない」とか、
クレジットカードの「ママ層」みたいな設定もそうです。
簡単でしょ?
もう1つがサイコグラフィックと呼ばれる
「心理面」でのペルソナ設定です。
具体的には、お客さんの考え方や好みのことです。
じゃがビーの「ヨガや水泳にこっている」
という設定がそれです。
この2つのうち、効果がなかったのは
どちらだと思いますか?
デモグラフィックと呼ばれる
「基本情報」でのペルソナ設定でしょうか?
それとも、サイコグラフィックと呼ばれる
「心理面」でのペルソナ設定でしょうか?
答えは、どちらも効果がありませんでした。
ごめんなさい! ひっかけ問題でした。
この論文によれば、
どちらの方法でペルソナ設定をしても、お客さんは
あなたの商品を積極的に選んではくれないのです。
でも、言われてみたらそのとおりじゃないですか?
もしあなたが女の子だったと仮定して、
3時のおやつの時間に
チョコレートバーが食べたくなったとします。
そのとき、「これは女の子向けではありません」
とヨーキーの包装に書いてあっても、
ガン無視しませんか?
「チョコに男も女もあるかーい!」って、
普通にヨーキーを買って食べるはずです。
そうでしょ?
じゃがビーだって同じですよ。
たしかに、ヨガや水泳にこっている女性は
じゃがビーを食べるかもしれません。
でも、同時に、だらしない体のおっさんだって
じゃがビーを絶対に食べてるはずです。
だって、じゃがビーだって、
所詮ただのスナック菓子ですからね!
そうでしょ?
そうなると、ここで新たな疑問が出てきます。
「もしペルソナ設定に集客の効果がないとしたら、
じゃがビーはなぜ大ヒットしたの?」と思いませんか?
なぜなら、古いマーケティングの常識では
「じゃがビーの大ヒットはペルソナのおかげ」
と言われているからです。
センスのよいあなたならもう気づいたかもしれません。
ヒントを出すと、「じゃがビーはペルソナではなく、
別の原因によってヒットした」んです。
じゃがビーがヒットした本当の原因は、
何だと思いますか?
次回は、この新しいマーケティングについて
解説しますね。
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以上、「ペルソナって意味ないの?
まさかの検証結果」の第2回目でした。
次回の記事も、楽しみにしていてください。