こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
日本を代表する経営コンサルタントの
大前研一(おおまえ けんいち)さんの本の中で、
私が折にふれて読み返している1冊があります。
『大前研一 敗戦記』
大前 研一 (著)
大前さんは6億円の私財をかけて、
「平成維新」を旗印に、
1995年の都知事選に出馬するも、落選。
それまで大前さんから教えを請うていて、
「大前先生が出馬したら、応援します」と言っていた財界人も
手の平を返したのです。
財界人の下劣で非道徳な手口と、
大前さんの忸怩(じくじ)たる思いが
描写されている一冊です。
大前さんの本は、どれも強気で論理的なのですが、
この本だけが感傷的で、泥まみれになったプライドが痛々しく、
それゆえ、私は大前さんの本の中で一番好きなのです。
その中でも、私が特に衝撃を受けたのが、
大前さんが、友人である加山雄三さん(歌手)から
注意を受けた言葉です。
リーダーというのは、誰よりも高い理想と同時に、
誰よりも低い目線を持っていなければいけない、
ということを思い知らされます。
非常に長いのですが、
加山雄三さんの言葉を引用してみましょう。
「俺は選挙中、お前には何も言わなかった。
あんなに一生懸命やっているのを見ると何も言えなかった。
だけどね、あんた滑稽だよ」
「あんたの政策は素晴らしい。
僕なんかが聞くとその通りだと思う。
でも、あんたはまったく『底辺』の人々の心に触れていない。
おまえさんの言うことは
やっぱり『底辺』が唸るもんじゃねえ。
ごく一部の知識人がなるほどと思うだけだ。
僕は吉本興業にも、
どこのプロダクションにも属してこなかった。
それで三十五年間歌を歌って食べてきた。
その意味では、大衆が何を考えているのか、
自分が掴まなかったら、すぐに客がこなくなる。
だから、あんたより大衆が考えていることには敏感だ」
「あんたがなぜ滑稽なのかというとね、
全部一人でやろうとしているからだ。
明治維新を見なよ。
このまま行ったら日本は欧米列強の植民地になる、
大変なことになるという共通認識があった。
その危機感が皆にあって、皆がそれぞれの思いで、
尊皇だ、いや攘夷だ、いや開国だと百家争鳴した。
百家争鳴したけれど、そういう意見の違いを乗り越えて、
このままいったら日本は植民地になるという危機意識をバネに、
力をあわせてやりとげた。
それを後の人が『明治維新』と呼んだだけだ。
それと比較すると、大前さんは、全部自分で分析して、
全部自分で答えを持ってて、何聞いてもわかってて、
そして一人で興ってもいないのに、『平成維新』と言って、
『平成維新です。みんなやりましょう』
とやっている。それじゃあピエロだ」
「『平成維新』なんて言葉はやめちまえ。
基本的にはね、もっといい国作ろうと。
日本というのはこんなもんじゃねえはずだと。
我慢できないぞと、こういう言葉で言えば、
一般の底辺の人にもわかりやすい。
今の日本、家庭をもっと大切にしよう。
もっといい国作ろう。それで、その結果として、
皆が集まってきてやったものが、後の人が
『あれは平成維新だったな』
と言ってくれるんじゃない。
一回呼びかけかた変えて、『平成維新』だなんだって
答えがわかっているようなことを言うのをやめなよ」
(※原文ママ 100~101ページより引用)
リーダーとはどういう存在であるべきか?
読むたびに考えさせられますね。
コメント
さすが、加山雄三さんですね。
素晴らしい御言葉です。