こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
中途半端にマーケティングをかじった人が
よく勘違いしていることがあります。
それは、経営コンサルタントのピーター・ドラッカーが
「マーケティングはセールスを不要にする」
と言ったという“誤解”です。
これは、ドラッカーの原著ではなく、
薄っぺらい本、ネットの記事、YouTubeなどで
マーケティングを学んでいる人に多い間違いでしょう。
「マーケティングすればセールスはいらないんだ!」と
的外れな理解をしているバカがたまにいるのです。
ですが、ドラッカーは前述のような発言をしていません。
簡単に言えば、ドラッカーの主張は
「マーケティングは余分なセールスを減らす」
くらいのニュアンスです。
たとえば、ドラッカーの原著である
『Management: Tasks, Responsibilities, Plactices』に
次のような記述があります。
The aim of marketing is to make selling superfluous.
この英文を直訳すると、「マーケティングの目的は、
セールスを不要にすることだ」となります。
たしかに、この部分だけを浅く読むと、
「セールスが不要」というフレーズが印象に残るでしょう。
ただ、正しく文脈を読み取ると、
「結局セールスは必要」という意味だとわかります。
なぜなら、あくまで「マーケティングの“目的”」の
話をしているだけだからです。
意味、わかりますか?
わかりにくく感じる場合は、別の例で考えてみてください。
たとえば、
「予防医療の目的は、急病で倒れる人をゼロにして
救命医療を不要にすることです」と
医師が言っていたらどう思いますか?
「予防医療があれば、救命医療がなくてもいいんだ!」
というのは間違った理解ですよね。
あくまで「急病で倒れる人をゼロにしたい」という
理想を語っているだけだからです。
予防医療で健康な人を増やそうとするのは
素晴らしいことでしょう。
ただ、本当に救命医療を廃止するのはありえない。
実際のところ救命医療は必要ですし、
そんなことは医師もわかっています。
これと同じことが言えます。
商品開発、ポジショニング、集客、ブランディング
などなどのマーケティングが成功すれば、
ムダなセールスを減らせる場合があります。
なぜなら、売れる確率が高い状態を作れるからです。
とはいえ、どこまでいってもセールスは必須。
どんなにマーケティングに注力したところで、
セールスが未熟だと売れないので
売上にはつながらないからです。
当然ながら、こうした前提はドラッカーも理解しており
すべてのセールスが不要だとは言っていません。
にもかかわらず、
原著が翻訳されて伝言ゲームのように広まるうちに
誤解する人が増えたのでしょう。
「マーケティングすればセールスはいらない」なんて
「予防医学があれば救命医療はいらない」
と考えるのと同じくらい愚かです。
万が一にでも救命医療を廃止したら、
急病で倒れた人が亡くなってしまいかねません。
同様に、もしセールスをやめてしまったら、
売上が立たずにビジネスは潰れていきます。
間違ってもドラッカーの発言を曲解して
セールスの学びと実践をやめないでほしい。
また、ドラッカーを誤解しているような
勉強不足の講師からはすぐに離れてください。
相馬一進