こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
商品開発を教えているコンサルタントの中には、
「クレームや愚痴から、新商品を発想しなさい」
と教えている人がいます。
たとえば、
「文字だけのマニュアルは分かりにくい」
とお客さんが愚痴を言っていたら、
「動画のマニュアルを用意する」というように
不満の解消策を、新商品にするわけです。
このような「愚痴から発想を広げる」という方法は、
短期的には間違いではありません。
そこそこ売れる商品・サービスを
開発する考え方の1つでしょう。
しかし同時に、長期的に見れば
次第に商品が売れなくなるやり方でもあります。
その理由は2つあります。
1つ目の理由は、他の同業者でも
すぐにマネできる商品・サービスに
なりやすいからです。
たとえば、前述の
「文字だけではなく、動画マニュアルも付ける」
という例を想像してみてください。
たしかに、動画を用意すれば、
お客さんは喜ぶでしょうが、
同業他社でも似たような発想になりますよね?
このように、すぐにマネされてしまうので、
差別化ができなくなるのです。
2つ目の理由は、
不満点を改良しているだけの会社では、
ファンがつかないからです。
iPhoneが登場する前の日本の
ガラケー市場が、まさにこの状態でした。
お客さんが
「ケータイで決済ができたらいのに」
と言っていたら、お財布ケータイを作る。
お客さんが
「ケータイでテレビが見れなくて不便だ」
と言っていたら、ワンセグを付ける。
こうした愚痴に対する改良を続けた結果、
どうなったのか?
大半のケータイ利用者は、
開発会社に何の愛着も持たなくなりました。
別の安い商品が登場すれば、
いつでも乗り換えるような人ばかり。
その後、どうなったかは
あなたも知っての通りです。
「携帯業界のポルシェのようになる」
という強い理念を持ってiPhoneを開発した
アップルにシェアを取られてしまいました。
iPhoneは決して完璧な製品ではなく、
不満点も多くありましたが、
アップルの世界観が好きなファンは使い続けます。
ブランドを築いていなかった、
日本の携帯会社が、苦戦する状態になりました。
ここから言えることは、
商品・サービスの開発で、本当に重要なのは、
会社の世界観だということです。
・「◯◯なライフスタイは素晴らしい」
・「お客さんに△△な人生を送って欲しい」
・「世界に××な影響を与えたい」
というような狂気じみた世界観が、
売れ続ける商品開発の要なのです。
もちろん、そのような世界観が
すぐには定まらないでしょう。
ですが、見つかればビジネスの規模が
何十倍にも大きくなるのです。
「愚痴やクレームから発想する」
という小手先のやり方は、
野球の初心者が周りの顔色を伺いながら、
ムダにバントを打っているようなもの。
本気でビジネスをするなら、
自社の世界観を打ち出して、
ホームランを狙ってみてください。